ポキさんのアルバイト。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第三十回

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ポキさんのアルバイト。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第三十回

ポキさんのアルバイト

介護・福祉


2017年09月13日

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こんにちは、ミチルです。今回は「ポキさんの知られざるアルバイト」についてお話します。

 

デイサービスで野菜をおすそ分け。

 

ポキさんは無趣味ですが、唯一、野菜を作ることだけは好きなようです。私や姉の手は借りず、すべて自分ひとりで畑仕事をしています。

とうぜん無農薬で、かたちも少々イビツだったりしますが、自宅かせいぜいお世話になっている方たちにあげる程度なので問題はありません。

数年前からは、デイサービスにも持っていくようになりました。そういう手土産みたいなものは、他の利用者さんの手前もあり、あまりよろしくないのでしょうが、オーナーのIさんが「せっかく、ポキさんが丹精込めて作ったのだから」と、デイのランチに使ったり、スタッフで分けたりと、なんとか処理してくれていたのでした。

 

そんなIさんですが、去年くらいからごくたまにポキさんを送り届けてくれた時、「野菜のお礼に」と、スィーツを手渡すようになったのです。世話好きのIさんのことなので、あまり気にも留めていなかったのですが、先日、いただいたケーキがあまりに美味しかったので、相伴していた姉のルミコさんに言ったのでした。

「Iさんって太っ腹だよねぇ。これ、高かったんじゃないの?」すると、ルミコさんは不思議そうな顔をして言うのでした。

だって、これ、ポキさんが稼いだお金だよ

「は?」

 

野菜がケーキになった理由。

 

なんと、今までの差し入れは、すべて「ポキさんの野菜」からの収益だというのです。事情はこうです。ポキさんがデイに持っていく野菜は、持て余すことも多かったらしく、見かねた利用者さんが「捨てるんなら、私に頂戴」と、なったそうです。最初は1、2人の希望者が持ち帰っていたそうですが、そのうち「百姓の作る野菜は、うまい」と評判になり、他の利用者たちも欲しがることに。彼らも「タダでもらうのは気がひけるから、気持ちだけ」と、部屋の片隅に用意した“野菜無人販売所”の小箱に心付けを放り込むようになったというのでした。もちろん、ポキさんと利用者さんの間で直接お金のやりとりはありません。

そして、貯金箱がある程度の重さになると、Iさんがポキさんに現金を渡す代わりに、家族3人のお茶うけになりそうなものをテイクアウトして持ってきてくれるようになったというわけです。

 

おそらく、デイサービス等では物品の売買は原則禁止なので、物々交換(一時的に、現金になりますが)にしているのでしょう。よその介護施設では、あれもダメ、これもダメと、規則にがんじがらめで味気ないところもあると聞きます。そういう意味では、Iさんの経営するデイは、多少の融通もきく、まさに利用者ファーストのありがたい居場所なのです。

Temper Justice with Mercy—-正義に慈悲の心を焼き入れる。法に人情を加味するという意味ですが、私の好きな言葉のひとつです。四角四面になりなさんなよ、お互い生身の人間なんだから、と。

 

それにしても、ポキさんはIさんのおかげで、かろうじて社会と繋がっていられることを分かっているのでしょうか。

「このケーキは、ナスとキュウリが化けただぁ」と、ドヤ顔で2個目のシュークリームをパクつく彼女を見る限り、期待するだけ無駄のようです。

 
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ミチル
埼玉在住のアラフィフ。翻訳家、ライター。 30年ほど前、育ての母を介護するため大学を 中退した元祖ヤングケアラー。現在は、縁の なかった産みの母ポキさん(83歳)が認知症 となり、2度目の介護をスタート。 都心の外資系OL生活から一転、数十年ぶりに 閉鎖的な田舎に引き戻され、七転八倒の日々。 2016年、放送大学卒業。
ウチシルベ