「自宅での介護はとても難しいので、老人ホームに入所させてあげたいんです。本当は娘の私が最後まで世話をするべきなのですが……。」
上のようにお話して下さったのは93歳のお母様の介護をされていた70歳の娘さんです。
数年前からご自宅で介護をしていましたが、お母様が転倒され数か月前から入院していました。
入院中はベッドでの生活が主になり、筋力が弱り歩くことが困難に。介護はより難しくなりましたが、退院日は迫っている状況でした。
兄弟にはできるだけ迷惑をかけたくないと、ひとりで高齢のご両親の世話をしてきたAさん。
自身の病気で週2回病院に通っており、気力だけでは家事と介護は難しい。退院後そのまま老人ホームに入れてあげるのが本人の為かもしれないと申し訳なさそうに話すAさんも70歳。
お話を聞いているうちに胸が熱くなったのを覚えています。
高齢化が進む現在、高齢者と呼ばれる65歳以上の方は日本人の4人に1人という割合になりました。
Aさんのような、高齢者が高齢者の介護をする「老々介護」と呼ばれる状態の方が年々増えています。
父もいつまで自宅でお世話できるか分からないので、二人とも入所した時の事を考え、月々の費用が安いところ、車がないのでバスか電車で週2回は様子を見に行ってあげられるところ、1日3回の胃ろうの処置に対応してくれるところ。この3点がAさんの希望でした。
「出来るだけ費用を抑えて希望の金額で」という老人ホーム探しに難航しましたが、胃ろうの分、食費が掛からないで済むホームを近隣でお探しし、ご紹介させて頂きました。
ホームをAさんにご見学して頂くと、気に入ったが他の家族にも見て欲しいとのお話でした。
2日後、Aさんの妹さん、甥っ子さんと再度施設を見てもらい、退院が迫っていたこともあり、次の日にはお申込みのご連絡を頂きました。
体調が優れないAさんに代わり、引っ越しの準備は甥っ子さんが率先して動いて下さりました。
Aさんとお父様とは何度もお会いしていましたが、恥ずかしながら他のご家族の関係を深くまで知らなかった私は、Aさんに協力し、お母様の為に家族みんなで動かれてる光景にすごくほっとして心が温まりました。
老々介護が増えている現状に、私たちお住まい相談員がどこまで親身に、その方に合った老人ホーム探しのお手伝いができるのか、再度考えさせていただく機会になりました。