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「一目でいいから自宅を見たい」-感涙story01

「一目でいいから自宅を見たい」

介護・福祉


記事公開日:2016/07/08、 最終更新日:2019/01/04

老人ホーム入居は自宅とのお別れのとき

高齢者は、さまざまな事情で介護施設に入居されます。本当は自宅で暮らしたいけれど、身体の状態、家庭の状況などから、自分の気持ちに蓋をして入居を覚悟する方は少なくありません。

 

鈴木加代さん(仮名)も、その一人でした。

鈴木さんは夫と死別してから一人暮らしをしていましたが、体調を崩して入院。退院後は介護が必要な状態となり、介護を頼める身内のいない鈴木さんは、住宅型有料老人ホーム「メディケア癒し」へ入居することになりました。

 

メディケア癒し
福岡市南区
西鉄天神大牟田線 大橋駅 徒歩約16分

退院日は、老人ホームへの入居日。

老人ホームに入居するということは、もう自宅へは戻れないことを意味します。

 

長期の入院中、入所の面談で会った老人ホームのスタッフに、鈴木さんは寂しそうに話していました。

「家の庭には水仙が咲いているかしら? 家に帰りたいけど、もう帰れないのね」と。

 

施設に入居される高齢者が、よく言われること。

それは、「一目でいいから自宅を見たい」です。

 

病院から老人ホームへの移動中、自宅を見たいという希望があっても、ほとんどの場合、希望が叶うことはありません。なぜなら、移動による身体的な負担、介護施設側の受け入れ体制の時間の問題などがあるからです。

 

鈴木さんが老人ホームに入居する日。

病院を出た車は、老人ホームに向かう道中、鈴木さんの自宅前で止まりました。

 

車椅子に座っている鈴木さんは、何も話さず、じっと自宅を眺めています。まるで、その光景を目に焼きつけるかのように…。

 

施設スタッフは、藪をかきわけ、庭に咲いていた水仙を摘んできて、鈴木さんに渡しました。

鈴木さんは何も言わず、水仙をいつまでも見つめていました。

 

病院に入院し、退院先が自宅ではなく、施設となることは少なくありません。退院後は自宅に戻るつもりだった鈴木さんにとって、自宅に戻れないことを受け入れるには覚悟が必要だったのです。

 

その覚悟を後押してくれたのは、水仙でした。

 

施設のスタッフは、水仙以外にも庭にある色とりどりのいろんな花を摘んできて、車いすに座った力のない手に握らせてくれました。

 

遠回りした送迎車は、1時間遅れで施設に到着。

 

そこには、施設のスタッフだけでなく、訪問医、薬剤師、ケアマネージャー、看護師など、忙しい中、鈴木さんの担当者がたくさん待っていました。

 

拍手でお迎えの中、

「どうしても家を見せてあげたくて、すみません、遅くなりました!」と、頭を下げるスタッフ。

 

しかし、遅れたスタッフを責める人はひとりもいません。

そのかわり、待っていたすべての方の感動の声がホームを包みました。

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