「すっごく考えて老人ホーム入居を選んだのに」
Aさんは、とあるグループホームに併設した小規模多機能を見学後、私におっしゃいました。
「そうですよね。Aさんの大変さやお気持ち、どのような経緯かを私はよくわかっていますから」
—
Aさんのお母様は80代の要介護1でお一人暮らしでした。
認知症を患っておりましたが、ヘルパーさんを利用しながら一人での生活を続けていました。
Aさんは関西で生活されていますが、月に一回はお母様と過ごすために福岡に帰って来られます。
お母様はたびたび家への帰り道が分からなくなって、とんでもないところで発見されることが多々あったようです。
朝夕とヘルパーさんが来てくださっていたようですが、ヘルパーさんからお母様がいないと聞くと
GPSでお母様の行方を探していました。
そして兄妹間では、「ある程度自由に生活させよう。もし何かあってもお互い恨みっこなしね」と話し合っておられました。
夕方や寒い真冬にお母様がいないことに気づき、遠方からGPSでお母様を探すAさんの気持ちはどのようなお気持ちでしょうか。
暗くなって、車にはねられとらんかいな?この寒さで大丈夫とかいな?もうどこにおるとよ・・。
心配する気持ち、何かあったらどうしようという不安、また?という怒りの気持ち。
そんな想いを何回も経験したある日、お母様は道に迷って転倒して骨折、その後脳梗塞発症により入院となりました。
これを機会に老人ホーム入居を検討、私と一緒に見学を進めていきました。
Aさんとのホーム探しは三カ月くらいかかりました。
住宅型有料老人ホームがいいのか、グループホームがいいのか。
一緒に見学して、ここはこうだった、ああだったと確認しながら少しずつしぼっていきました。
お兄さんから「ここも見てきて」と言われた老人ホーム見学のときです。
グループホームに併設した小規模多機能でそちらのケアマネさんの言葉がAさんの気持ちをざわつかせました。
「皆さん絶対に自宅がいいんですよ」
そう繰り返し言います。
「それはそうかもしれないけど、Aさんの状況も知らないでよくそんなことを・・」
在宅での生活を望まれる方は多いです。
ただ、全ての人が在宅での生活ができるわけではないですし、人それぞれです。
自分の意見の押し付けは良くないと思います。
私はもう少しAさんの話を聞いてほしかったです。
「すっごく考えて施設入居を選んだのに」
Aさんの言葉にとても胸が痛みました。
これから約2週間後にAさんはお母様のグループホームを決め、それから約一か月後にお母様は退院してグループホームへ入居しました。
今のお母様のご様子は—。
グループホームに慣れつつありますが、たまに不機嫌に電話をしてくることがあるそうです。
Aさんは来福の度に近況を報告してくださいます。
次回、お会いできるのが楽しみです。